備忘録

人付き合いは狭く深くがいいのか、広く浅くがいいのか

投稿日:2014/03/30 更新日:

人との付き合い方は2つしかない。

狭く深く付き合うか、
広く浅く付き合うかだ。

それではどちらのほうがよりメリットのある付き合い方なのだろうか。

ここで興味深い研究結果をご紹介しよう。

狭く深く付き合うメリットの例

ピッツバーグ大学のフリッツ・ピルとキャリー・リアーナが2009年に「アカデミー・オブ・マネジメント・ジャーナル」に発表した論文がある。
アメリカの公立小学校の教師1023人と4、5年生24,187人を対象に、
「教師個人が持つヒューマン・キャピタル(人的資本)とソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が子供の学力に与える影響」
を調査したのだ。

ここで簡単にヒューマン・キャピタルとソーシャル・キャピタルの説明をしよう。

ヒューマン・キャピタルとはその人の能力そのものを指す。
この文脈では教師が保有する知識、経験、学力、生徒に教える能力等のことである。

ソーシャル・キャピタルとは人と人との関わり合いがもたらす便益を指す。
この文脈では教師と同僚、教師と校長、教師と生徒の親等から得られる便益をイメージすればいい。

それでは、教師と生徒の学力にどのような結果がもたらされたのか見てみよう。

  1. 教師のヒューマン・キャピタルが多いほど、生徒の学力にプラスに働いた。
  2. 教員同士の人間関係が親密であるほど、生徒のテストの点数が良くなった。つまり、教師の間のソーシャル・キャピタルが多いほど、生徒の学力にプラスに働いた。
  3. 教師と校長の人間関係が親密であるほど、生徒のテストの点数が良くなった。つまり、教師と校長との間のソーシャル・キャピタルが多いほど、生徒の学力にプラスに働いた。

以上を要約すると、生徒の学力には、教師個人の能力の他、その人が周囲の人と築いた関係性が影響を及ぼすということだ。

広く浅く付き合うメリットの例

スタンフォード大学のマーク・グラノベッターが1973年に「アメリカン・ジャーナル・オブ・ソシオロジー」に発表した論文がある。
論文のタイトルは「The Strength of Weak Ties」だ。
この論文では、アメリカ・ボストンで就職先を見つけた若者54人が、就職先の情報をどのくらい親しい人から得たのかを調査したのだ。

結果は下記の通りとなった。

全体の83%もの人が普段あまり関わりのない知り合い程度の人から、自分を現在の就職先へと導いた情報を得ていたのだ。

つまり、就職に関しては弱い結びつきが優位に働くという結論付けができる。

浅い付き合いと深い付き合いのどちらがいいのか

それでは、本稿の冒頭に戻るが、結局はどちらの付き合い方がよりメリットがあるのか。

実はそれはケース・バイ・ケースなのだ。

地面に唾を吐き捨てるように「ちぇっ」と思った方もいらっしゃるだろうが、もう少し辛抱してほしい。

ケース・バイ・ケースとはどういうことかご説明しよう。

まず先の研究結果をまとめると、生徒の学力アップのためには、教師と周囲の人との人間関係の深度がポイントとなった。
つまり教師は職場の人と深い人間関係を築けば、得てして自分の評価にプラスに働くということだ。

対して、就職活動中の人は、浅い人間関係からもたらされる情報が、就職先を決める上で決定打となった。
つまり就活生はちょっとした知り合いとの関係を重要視すべきだということだ。

これを個人から企業に視点を拡張して考えてみよう。

半導体業界と鉄鋼業界における提携について

半導体業界と鉄鋼業界がある。

半導体業界は技術の進歩が日進月歩であり、それを特徴付けるムーアの法則という言葉もある。
ムーアの法則とは、Intel社の創業者の一人であるゴードン・ムーアが1965年に論文で発表した「半導体の集積密度は18~24カ月で倍増する」という法則だ。

では、半導体業界では他社とどのような関係を結べば業績の向上につながるのだろうか。

その答えはトロント大学のティム・ロウリーとディーン・ベーレンズ、カーネギー・メロン大学のデヴィッド・クラッカードが2000年に「ストラテジック・マネジメント・ジャーナル」で発表した論文にある。

半導体業界では弱い結びつきの提携を多く持つ企業の利益率が向上したのだ。
※ここでいう弱い結びつきの提携とは、企業間の共同マーケティングやライセンシング契約の類を指す。

鉄鋼業界はどうだろう。
鉄鋼業界は成熟市場に属し、技術の進歩という点で半導体業界と比較すると、その差は月とすっぽんだ。

結果は、強い結びつきの提携を多く持つ企業の利益率が向上した。
※強い結びつきの提携とは、合弁事業、資本提携、共同研究開発の類を指す。

なぜ、業界によって他社との結びつきの強弱と自社の業績との間に違いが生まれるのだろうか。

知の探索(Exploration)と知の深化(Exploitation)

それはそれぞれの業界の特徴を考えると分かりやすい。

上述したように半導体業界は技術の進歩が幾何級数的に進行するため、より新しい技術を他社に先んじて手にしていかねばならない。
そのためには、他社との弱い結びつきを通して、知の幅を広げ(知の探索)、既存のあらゆる技術を組み合わせて新しい価値を生み出すイノベーションを興す必要があるのだ。

対して、鉄鋼業界のような安定した業界では、知の幅を広げることよりも、自社が持つ既存の技術を深耕する(知の深化)ことのほうが、自社にとってメリットとなるのだ。

これは個人にも当てはまる法則であり、クリエイターのような新しい価値を生み出す仕事に就く人にとっては、
他人との弱い結びつき、つまり広く浅い付き合いによって知の幅を広げることが、自分の仕事の成果にダイレクトにつながることが予想できる。

以上の結果から、自分が他人とどのように付き合っていけばよいかお分かりいただけただろうか。

Structual Holes(構造的空隙)

最後にネットワーク理論に関して、面白い概念を紹介して終わりにしよう。

シカゴ大学のロナルド・バートが1995年に発表した論文の主題にもなった「Structual Holes」だ。

下の図を見ていただきたい。

Structula Holes
※私の手書きの図で申し訳ない。

自分の会社、英会話スクール、社会人サークル、飲み仲間、それぞれのグループをつなぐAをストラクチュアル・ホールと言う。
つまり、Aがなければ、それぞれのグループを結ぶ接点がない状況である。

ここで想像してほしい。
例えば英会話スクールで英語が1カ月で話せるようになる実績のある勉強法が話題になっていたとしよう。
もし仮に私がストラクチュアル・ホールAであり、この勉強法を知人の飲み仲間数名にレクチャーした結果、交換条件として普段手に入らない貴重な情報が得られたとしたら…

総じてストラクチュアル・ホールをたくさん持つ人は、たくさんの情報が手に入り、それを自分に優位に使うことができるのだ。
このストラクチュアル・ホールを生かしたビジネスといえば商社がその典型であろう。

年収を上げるためには

シカゴ大学のロナルド・バート、ロビン・ホガース、INSEADのクロード・ミショードが2000年に「オーガニゼーション・サイエンス」に発表した研究によると、
ストラクチュアル・ホールを多く持つ人のほうが、年収が高くなることが実証的に証明された。

ストラクチュアル・ホールを多く持っていて損はない。

私の知人に毎月大阪で飲み会を主催する非常に顔の広い20代の男女がいるのだが、
彼/彼女のように人との接点を数多く持つことが、人生経験を豊かにするということはほぼ間違いないであろう。

今回のネタはこの本に書かれている。
経営学部出身の私ですら知らないことばかりだった。
非常にエキサイティングな本だ。

今読んでいる本。
またお伝えできるネタを携えて、記事を投稿したい。

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  • この記事を書いた人

38theta

福井県福井市出身で大阪府大阪市在住。1986年8月生まれのITインフラエンジニア。

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